(12)空が青いのは 〜季節で変わる青と、宇宙へつながる色〜

10月になり、すっかり秋めいて、澄んだ青空が戻ってきました。
私は昔から空を見るのが好きで、とりわけ青空には強く心惹かれます。

青空は季節によって色合いや輝きを変え、空の色から季節の移ろいを感じることが少なくありません。
春の少し靄がかかったような優しい青色、夏の力強く輝くような青色、秋の宇宙につながるような深く濃い青色、冬の少し儚げな青色。
どれも私の感じ方ですが、空は本当に表情豊かです。

調べてみると、光と空気が織りなすメカニズムや、宇宙へとつながる空の深さが見えてきました。

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空の青は「散らばった光」

そもそも、なぜ空は青いのか。

太陽の光は、虹の七色がすべて混ざり合った光。この光が空気の中を通ると、窒素や酸素といった目に見えない小さな分子にぶつかり、四方八方に散らばります。このとき、波長の短い青い光ほどよく散らばって私たちの目に届き、波長の長い赤い光はあまり散らばらずに通り過ぎていきます。

空を見上げたときに見えているのは、空一面に散らばった青い光です。

赤い光の波長は青い光のおよそ2倍、散らばる強さは約16分の1。青よりさらに波長の短い紫の空にならないのは、人間の目が紫を感じにくいためだといいます。

19世紀の終わりごろまで、空の光は塵や水滴に当たって散らばっていると考えられていました。空気中の窒素や酸素の分子そのものが光を散らしていると結論づけたのは、イギリスの物理学者レイリーです。

レイリーは、音の響きや共鳴を体系的にまとめた『音の理論』という大著も残しているそうです。
空の青と音の響き。同じ「波」を見つめたひとりの科学者の中で、光と音がつながっていたことは、とても興味深いです。

季節で違う青色に見えるのは・・

季節によって空の青が違って見えるのは、太陽の位置の違いが大きいのだろうと思っていましたが、実際には主な理由は別にあるようです。
太陽の高さも多少は関係するものの、肉眼で見分けられるほどの差ではなく、空の色を大きく変えているのは水蒸気の量だとされています。

鍵になるのは、高気圧の「生まれ故郷」。
夏の海で生まれた太平洋高気圧は水蒸気をたっぷり含んでいるため、晴れていても空がぼやけた青になりがちです。水蒸気が多いと、青以外の色も一緒に散らばって混ざり合い、白っぽく見えるのだそうです。

私が感じていた夏の「力強く輝くような青色」は、空の色そのものというより、強い日差しのまぶしさが重なった印象なのかもしれません。

春の高気圧は、秋と同じ大陸育ちです。ただ春は雪や氷が解けたばかりで、草木もまだ少ない季節。土やほこりが舞いやすく、空気中の塵や水滴が増えるため、空は白く霞がかって見えます。「春霞」という季語は、この空の姿を実に美しくとらえていると思います。

そして秋になり、大陸育ちの乾いた空気に覆われると、青い光を強く散らす空気の分子の働きが際立ち、夏よりも青々とした空になります。まさに「天高く馬肥ゆる秋」です。

宇宙へつながる青

秋の空に宇宙を感じるのはなぜなのか。

晴れた日の空をよく見ると、頭の真上がいちばん暗く、低い空ほど明るくなっています。これは光が通ってくる空気の量の違いでよく説明できるそうです。真上の空は、私たちと宇宙との間にある空気が、いちばん薄い方向になります。

空気がさらに薄い、高い山の上では、空はいっそう濃くなります。
1870年の科学誌『ネイチャー』には、アルプスの高峰で空が黒く見える現象についての報告が載っています。ハワイのマウナロア山の頂上では、晴れた日の空がほとんど紫に見えるほどだといいます。そして大気の外に出れば、光を散らすものがなくなり、空は黒く見えます。

空の青は、宇宙の黒の手前に広がる薄い空気の層が、光を散らして作っている色。秋の澄んだ空が宇宙につながるように感じられるのは、光を濁らせるものが少なく、その向こうの深さに少しだけ近づいているからなのかもしれません。

ちなみに、ほかの惑星では空の色がまったく違うとされています。火星では大気がとても薄く、赤茶けた塵が舞うため、昼の空はピンクがかり、夕焼けは青くなるといわれています。
地球上では見慣れた青空も、広い宇宙の中では決して当たり前の色ではないということです。

秋の美しい夕焼けに思う

空気中の水蒸気や塵の量によって、季節ごとに様々な表情を見せてくれる青空。

とりわけ秋は、「秋の日はつるべ落とし」と言われるように、日没に向かう短い時間に、刻々とその色を変えていきます。

澄んだ青空が茜色に染まり、やがて紫がかったピンク色を帯びて、静かな夜の空へと移っていく。その美しい光景に、心から感謝せずにはいられません。

次回は、日本に昔からある、青のたくさんの呼び名について書くことができればと、思っています。

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